「角川つばさ文庫」を支える編集、営業、宣伝の各部門の担当者からお話をうかがいました。
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Q.角川つばさ文庫創刊のいきさつについて教えてください。
松山:角川文庫60周年にあたり、角川書店第1編集部はコード14、コード37、コード60の3世代に分かれ、それぞれのターゲットに合わせた企画をチーム単位で考えることにしました。ティーンエイジャー向け文庫の調査のためいくつかの図書館を訪れたのですが、角川文庫をはじめ、スニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫、電撃文庫など、角川グループの本が、とてもよく読まれていることを目の当たりにしました。司書の方にお話を聞くと、小・中学生の多くが、過去の名作よりも今の作家さんが書いた作品を好み、カバーやイラストを重視するということが分かりました。角川グループでは「ケロロ軍曹」という幼年向けのキャラクターが、海外でも人気になっています。しかし、そこから文庫を読めるようになるまでの間をつなぐ本があまり出ていません。かつての角川文庫と映像のメディアミックスで角川グループは「エンタテインメントの読書」を若い読者の方々に提供してきました。もっと若い読者に向けて、角川グループの作品群に親しんでもらえないかと考えられたのが、つばさ文庫でした。
上村:元々、2008年11月に棚一本分、作品50点を出す計画でしたね。しかし角川GPが調査してみると、書き下ろしが売れているということでした。全て切り替えばかりの文庫だと弱いなということで、2009年3月に延期しました。3月は学年が入れ替わる時期で春休み。新刊を出すには良いタイミングです。また映画「ケロロ軍曹」の公開にあわせて、つばさ文庫の「ケロロ軍曹」のプロモーションにもつながります。そのようなこともあって3月3日創刊に決まりました。ちょうどひな祭りです。創刊にあたり、角川のリニューアル作品、書き下ろし作品、映像系作品がバランスよく揃ったのではないでしょうか。
Q.「つばさ文庫」という名前はどのように決まったのですか?
上村:ネーミングは社内募集にかけました。名前を決めるにあたり、新しい児童書は、男の子にも女の子にも読んでもらえるものにしたいという思いがありました。そして「つばさ」という名前に行き着きましたが、とてもいい名前だと思います。男子にも女子にも、親御さんにも受け入れられる名前ではないでしょうか。これまで女の子をターゲットにした児童書が多いなかで、男の子にも手にとってもらえるネーミングなのではないでしょうか。デザインも男の子にも女の子にも手に取りやすい緑です。
松山:全国の7割の小・中学校で朝読が実施されていますが、児童文庫はどうしても女の子向けの本が多いということです。角川グループが得意とするエンタテインメント性が高い作品群は、男の子も楽しめる本として人気が出でくればいいなと思っています。
Q.グループ各社を巻き込んでの取り組みは大変だったのでは?
上村:児童書を作るうえで、暴力や差別用語は避けたものにしなければなりません。その辺のルール作りをいちから作成しました。どこまでの表現が許されるのかなど、学校図書館協議会の方に相談もしました。グループで同じルールを共有するには、ガイドラインを作成し、それを各社に伝えて、各社に実施してもらわなければいけません。そういった難しさはありますが、いろいろ議論するなかで、非常に参考になる提案がもらえることも多かったです。
松山:本来、雑誌は編集部というチームで作っていきますが、文庫や単行本は、担当編集者が一人で決断をしていく部分がたくさんあります。今回、創刊に関しては、つばさ文庫のフォーマットを作るという作業を、みんなでやっていきましたので、いろいろな意見が飛び交いました。しかし、子どもたちが読みやすい字組、手に取りたくなるカバー、仲良くなれるキャラクターを見つけるという点では一致していましたから、最終的には、メンバーが納得できるものができたと思います。むしろ、いろいろな人が関わることが、とても新鮮でした。
上村:時間がないなかで、会議でどんどん決まりごとが更新されていく。だから一回でも会議を休むとついていけなくなります。些細な修正がいっぱいあり、そういったことをひとつひとつ解決していきました。制作も編集も各社が受け持つので、連携のとり方は今後の課題です。そのためにマニュアル作りも始めました。
佐藤:グループ各社がもつそれぞれの媒体を使って、宣伝協力してもらえたことは良い点です。各社がもつ文庫レーベルにチラシを折込みで入れてもらったり、角川つばさ文庫を紹介してもらったりしました。普段担当することがない媒体を使えたことも勉強にもなりました。
Q.児童向けの展開ということで宣伝はどのように行ったのですか?
佐藤:何をすべきかで、創刊時の狙いを「角川つばさ文庫の認知」と「イメージカラーの認知」の徹底に絞りました。ポスターや帯、しおりもグリーンで統一しました。これからキャンペーンを行うときに、子どもたちに手にとってもらいやすい工夫を検討しています。キャンペーンを親目線でするのか、子ども目線でするのか悩みましたが、本を選ぶのは子どもです。親に伝えることを切り分けて考えました。子どもの場合、口コミの影響が大きい。女の子同士が「これ良かったよ」と伝えるには、手に取りやすいシールや小冊子が効果的だと考えました。
松山:結局、子どもたちが一番集まる場所は学校。いかに学校の図書室で話題になってもらえるかが勝負だと思いました。パンフレットを送る、ポスターを貼ってもらう、子どもたちが好きなシールをつけるなど、細かい作業を地道にやっていこうと思っています。
佐藤:キャラクター作りには実際に学校でヒアリングも行い、「つばさちゃん」という名の女の子に決まりました。そして本の紹介をつばさちゃんがしてくれるという設定にしました。創刊前の期待を高めるため、目に留まりやすいように改良を加えたのがこのポスターです。背景は実際の黒板です。その上にチョークで「つばさちゃん」を書いていきました。
上村:それから店頭用に、「つばさちゃん」をアニメにしたDVDを作ろうということになりました。
松山:テーマソングがあったらいいなということになり、10年以上連載を担当していた矢野顕子さんに作曲・弾き語りをお願いしました。来日中の2時間というタイトなスケジュールで、「本をひらくと」という歌が完成。アニメーションともピッタリで、本を読みたくなります。
Q.児童向け文庫の初の参入ということでどのように書店営業をしていったのですか?
上村:はじめての試みなので、本を置いてもらう棚がない。そのため、児童文庫の実績ある店舗の洗い出しからスタート。そして本を置いてもらえる書店へ営業をかけました。角川出版販売との連携による営業、そして販売会社の協力もいただきました。子どもが通う書店というのは、これまで角川とは付き合いが薄かったところが多い。書店の種類も違うし、今後良い関係を築きながら、絵本や単行本を出すときに、児童書のコーナーを作っていければいいですね。1年後に棚ひとつ分確保するのが目標です。
Q.株主の皆さまにひと言お願いします。
松山:児童レーベルは、「種」を蒔き、「種」を育てることが大きな仕事のひとつです。かつての「時をかける少女」「ぼくらの7日間戦争」「セーラー服と機関銃」を見て、読んで育った世代は、今、作り手になっている人がたくさんいます。ですから、角川つばさ文庫の読者から、「21世紀のエンタテインメント」の担い手が出てくることを、願っています。
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